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奈良の老舗「かにや」

2025年10月30日

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 奈良県で最も歴史のある商店街、もちいどのセンター街。かつては地元の暮らしに寄り添うお店が軒を連ね、今もその面影を残しながら、若い世代や観光客の姿も増え、少しずつ新しい風が吹き込んできています。チャレンジショップ「夢CUBE」や、2026年春にオープン予定の新商業施設、夜市など、時代に合わせた取り組みが次々と生まれ、商店街の表情も変わりつつあります。

 そんな商店街の一角に、今も昔も変わらぬ佇まいを守り続ける老舗茶道具店「かにや」があります。店内に足を踏み入れると、温かく穏やかな店主が迎えてくれます。店主とは、ご紹介をきっかけにご縁が生まれたお施主様でもあり、今もその繋がりを大切に紡いでいます。

 棚には四季折々の茶道具が丁寧に並べられ、静かで心落ち着く空間が広がります。道具の一つ一つに店主の心遣いが感じられ、眺めているだけで心がホッとするような時間が流れます。初心者にも扱いやすい品から、長年茶道に親しむ方が求める逸品まで幅広く揃い、別注や修理にも柔軟に対応されているそうです。

商店街の賑わいの中で、静かに営まれる「かにや」。ここには、時代が変わっても”おもてなしの心”がありました。取材中、店主と弊社担当者との会話から自然と伝わってきた信頼関係は、人と人との繋がりを大切にする弊社の姿勢とも重なり、温かな気持ちになりました。

季節の移り変わりを感じられる店内。初心者からベテランまで、店主との会話を楽しみながら、自分にぴったりの品を見つけてみませんか。

 ところで、「かにや」という屋号。茶道具店なのに「かにや」?ちょっと気になり、インタビューさせていただきましたので、その由来を少しだけご紹介します。

 江戸時代中期、加仁屋利兵衛(かにやりへい)氏が、公納堂町で呉服屋を営んでいたことが始まりで、「かにや」の屋号はそこから代々受け継がれてきました。

 昭和初期には、もちいどのに移転。しかし戦争による物資不足で本業の継続が困難となり、戦後は毛糸や鞄の販売へと業態を変えて、新たな一歩を踏み出されました。

公納堂町にあった「かにや呉服店」

 平成初期には、公納堂町の持ち家の改装をし、奈良町の街並みに調和した町屋の再生に貢献。器と茶道具のお店「かにや」をオープンされました。一見すると一つの建物のような趣ある表構えですが、格子戸を開けると敷地の中央に路地が設けられ、両側には4軒ずつの貸家が並びます。現在では、それらが店舗として貸し出しされ、個性豊かな空間となっています。

公納堂町の「今」

 そして現在、公納堂町ではご主人が、もちいどのでは奥様がそれぞれお店を切り盛りされていましたが、ご主人の体調不良をきっかけに、もちいどののお店で茶道具の販売をされることになりました。

 屋号の由来や歴史を辿ってみると、「かにや」という名前に込められた想いと歩みが見えてきますね。店内に茶道具だけでなく、毛糸や鞄が置かれているのも納得です(^^)もちいどのセンター街へ訪れた際には、是非立ち寄ってみてください。あなただけの一期一会の道具が見つかるかもしれません。

現在の「かにや」

                                    R7年 不動産部 山本